IRODORI vol.02
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 ノルウェー王国と聞いて真っ先に思いつくものは何でしょうか? 極夜の空に舞うオーロラ?スカンディナヴィアのヴァイキング?アナと雪の女王?それともエドヴァルド・ムンク?とたくさん浮かんできますが、ノルウェーを語るうえで外せないのは、ノルウェー西部に広がるフィヨルドではないでしょうか。「フィヨルドランド」としてもよく知られていて、ノルウェーには、長さ57,000kmの海岸に沿ってフィヨルドが1,700以上ある。(フィヨルドとは、古くからあった谷に氷河が入り込み、水と氷によって徐々に山塊をすり減らして形成された、急な側面または崖のある長く狭い入り江のことを指す。) 中でも有名なフィヨルドはユネスコの世界遺産に登録されているネーロイフィヨルドおよびガイランゲルフィヨルドの2つになる。 この2つのフィヨルドはノルウェーで最も人気のある観光地になり、険しい山腹がきらめくフィヨルド、雄大な自然、絵のように美しい小さな村や農場と、おとぎ話のページからそのまま抜け出したような光景が広がる。 私も写真や映像でしか見たことがないのだが、そのスケール感や織りなす色の具合が、まるで作り物ではないかと思わせるぐらいに、東京に住み暮らしている私にとっては、とても不思議な光景に写る。私自身も一度は実際に現地に行って、その色や感覚を肌で感じたいと強く思っている。 水に恵まれた環境により…  そんなフィヨルドの地形が成す産物が高品質なシーフード。山からの雪解け水が海に混ざって魚が育つ絶好の塩分濃度となっており、中でもノルウェーのアトランティックサーモンやサバはあまりにも有名な海の幸。 19世紀半ばから、サバはノルウェー人の中心的な食材でした。鮮魚が富裕層でなければ手に入らない高級品であった頃、缶詰が普及する前までは、一般のノルウェー人は、塩漬けや燻製、または保存食のサバを食べていた。多くのノルウェー人が冬に備えて■一杯のサバを貯蔵していたようだ。 そして、高品質のシーフードを加工した缶詰はノルウェーとは切っても切り離す事のできないものの一つ。1918年のアルミ缶の缶詰利用をきっかけに、ノルウェーにはたくさんの缶詰工場が存在するようになった。1920年代には、スタヴァンゲルに70前後の工場ができ、ノルウェーの缶詰産業を盛りあげたという。 現在、スタヴァンゲルにはかつてのオイルサーディンの工場跡地を利用した缶詰産業専門の「缶詰博物館」がある。Foap - VisitNorway.comEdvard Munch_The Scream_1910_©Munchmuseet 「海は与え、海は奪う。」とノルウェー人は言う。彼らは、恵みを捕獲するために、絶えず海と闘ってきた歴史が、そこにはある。 そんなノルウェーの現在の缶詰事情だが、ノルウェーサバのトマト煮というシンプルなものや、カタクチイワシよりも小型なブリスロング種を使用したオイルサーディンが有名。日本でも簡単に手に入るので、絶品の缶詰を是非堪能して欲しい。 かつてスタヴァンゲルを大いに沸かせたイワシ産業にまつわる説明、光景、においを閉じ込めた印象深い博物館です。スタヴァンゲルで古くから栄え、1960 年代までは街を支える最大の産業だった缶詰製造が紹介されています。缶詰づくりのさまざまな工程、30,000 点の缶詰のラベル コレクションを見学し、調理したてのイワシを試食することができます。 メイン展示では、イワシや魚のつみれの缶詰を製造する 12 段階の工程を順に学ぶことができ、塩の添加、燻製、頭部の切り落とし、缶の詰め込みなど、さまざまな工程で使用される機器類をご覧いただけます。 隣接する小屋には、1920 年代〜 1960年代に一般的に使われていた家具や玩具、装飾品が、当時の作業員の生活を再現するように展示されています。 毎月第 1 日曜日に、伝統的な薪のオーブンでスモークしたばかりのイワシを試食することもでき、来館者の多い夏は、火曜日と木曜日にイワシの燻製の調理を体験することもできます。Øyvind Heen ‒ fjords.comノルウェー王国人と自然と調和を保ちながら…  ノルウェーは小さい国ですが、極北に位置する誇り高い国。そこに住む人たちの熱意が、ノルウェーを海洋産業で世界最高位の一国に押し上げている。ノルウェーにとって、漁業は死活問題。ノルウェーの漁業は過去を守ること。そして未来を見つめることなのだ。ノルウェー缶詰博物館とは14北欧の自然大国へKongeriket Norge

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